「リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか 」大塚英志+東浩紀 著 

秋葉原事件についての言及が刺激的だった。
加藤智大容疑者の「自分は本当の自分ではない、だから皆に誤解され、不遇に陥っているのだ」という感覚がこの世代にひろく共有されているーーという見方は、真実だと思うし、朝日新聞など大手メディアが格差社会、労働不均等という切り口でしか語ることが出来ず、片手落ちになっている側面であることは間違いないだろう。

オタク世代に対し、「大人になりなさい」という意見に賛同出来ないという東の立場は、「逃走論」の淺田彰をはじめ上野千鶴子など、時代ごとに論壇で常に観察されうる社会的抑圧への反発現象だという大塚の味方も鋭い。しかし、そのような状況論よりも、秋葉原事件以後、自分たちの書く行為が、孤独に苦しみ己の弱い意志につぶされそうになっているニート世代に果たして、本当に届いているのか、救いの作用など本当にあるのかどうかについて、真剣に考えるようになったという東の言葉に、今の時代を背負ってゆこうとする批評家として責任感が感じられ、共感した。

僕も都内の演劇学校で、20代前後の学生をしばらくの間教えたとき、一回り下の若者(こういうといかにも距離をおいた感じであるが、もっと身近に感じている)の演技指導をやった時に感じたのは、青年時の内向的なナイーブさとは、また一歩違う澱んだディスコミュニケーション、意志の薄弱さからくる揺らぎ、畏怖のようなものだった。何かに憤り、その対象を見定めるため躍起になっていたり、声を張り上げているならまだいい。それよりも何か焦点をぼんやりとしか結ぶことが出来ない自分に対し自己否定を繰り返しているような印象だった。そんな学生に対し、「閉じこもるな」と恐喝しても逆効果であるとき、どうすればいいのか。それが大きな問題だと思う。

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