疾走の力学 “The Taking of Pelham 1 2 3” by Tony Scott

サブウェイ、白バイ、パトカー、タクシー、ヘリコプターと、絶え間なく全篇で乗り物が疾走し続ける印象ばかりが瞳を直撃し、常に画面の右から左へ、またはその逆方向へ物体の高速移動を轟音とともに追い続けるしかない・・・それがトニー・スコットの新作だ。初見ではその勢いとエネルギーに興奮するばかりだが、よく考えてみるとタイトルクレジットの時に既に地下鉄はハイジャックされ、42丁目Grand Central駅の手前の丘状になったある地点でいったん停止する。しかし、車両が静止するやいなや、犯人たちは後部を切り離し、首領格のトラボルタが乗る一両を残して、逆方向へと進行させる。同時にトラボルタは、デンゼル・ワシントン演じる地下鉄コントロール室指令担当に身代金要求を始め、一方、NY市長は地下鉄に乗って出勤途中だ。(現市長Michael Bloomberg も確かにsubway で通勤しており、映画のご都合主義ばかりではない、NYの交通事情でもある)。常に何らかの乗り物の滑走が画面を横断し続け、止まらない。切り離され、走行する車両が乗り合わせた覆面警官と犯人グループの小競り合いにより停止したと思えば、市長は既に現金1000万ドルを至急輸送するようにという指令を下しており、ブルックリンのNY市庁ビルから白バイに警護されたパトカーが猛スピードで出動する。さらに、派手な衝突事故を繰り返しつつもなんとか白バイが現金バッグを42丁目駅に届けたと思いきや、犯人は地下鉄指令担当のワシントンがそれを届けるよう要求。ワシントンがヘリでNYのビル群の谷間を急行し、金を持ってトラボルタと対面する。ようやく、事態は「静止」に向かうかと思いきや、トラボルタは、一両のみの地下鉄をワシントンに運転させ発進。一駅通過したとたん、緊急停止、犯人グループとワシントンは下車し、Subway123を自動運転で猛スピードで突進させる。MTA (Metro Transportation Authority、NY市営地下鉄) 事務員たちやNY市警の刑事たちが詰めている中央コントロール室の静止した時間が、ウォンという爆音をかき鳴らすバイクや地下鉄の疾走に切り裂かれ、運動が停止したと思いきや、異なる乗り物が走り出す。一つの目的地に向かって突進する乗り物(自動車、地下鉄、ヘリ、バイク)が矢継ぎ早に画面を横切る、これがトニー・スコットの運動の力学ではないか。

脚本も良くできていて、デンゼル・ワシントンが日本の地下鉄車両卸売会社(ちなみに川崎重工だ)から3万5千ドル収賄したというくだりは、素晴らしい。世の中無実の善人など存在せず、太った男たちがジョークと文句をぶちまけているという世界観はオルドリッチに通底している。

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